井上英之兵庫県議会議員の差別発言に抗議する

5月16日に開かれた兵庫県議会の委員会で、自民党所属の井上英之県議が男性同士の性行為によるHIV(エイズウイルス)感染防止について発言した一連の発言について、私たちレインボー・アクションは抗議をするとともに県議の発言の撤回と認識不足の確認を要求します。
5月17日、朝日新聞の報道によりますと、井上県議は男性同士の性行為によるHIV感染防止について、次のような発言をしたとあります。
「社会的に認めるべきじゃないといいますか、行政がホモの指導をする必要があるのか」
「偏った性嗜好(しこう)で本来ハイリスクは承知でやっている人たちのこと。他にも重要課題がある中、行政が率先して対応する必要はない」
井上県議の発言は、同性愛者は行政の指導の対象として認めるべきではないという主張であり、同性愛者の社会権を否定する、極めて差別的な発言であります。また、井上県議は発言の中で「ホモ」という単語を使用していますが、この文脈では同性愛者に対する侮蔑語として使われており、この点においても、井上県議の発言には、同性愛者に対する差別・偏見が含まれていると判断できます。
また、井上県議は「偏った性嗜好で」と述べていますが、同性愛とは「性嗜好」の問題ではなく、「性的指向」の問題であります。
「性嗜好」とは性的な事柄に関する趣味という意味ですが、同性愛は趣味ではありません。異性愛者の多くが異性愛を趣味ではないと思っているのと同様に、同性愛者にとって同性愛は趣味ではないのです。同性愛とは、性的指向が自ずと同性に向いてしまうことの結果であり、本人の自由な選択で選ぶものではありません。この点において、井上県議の発言は、甚だ見識を欠いたものであり、許すことはできません。
また、同性愛のような社会的関係に基づく差別は、日本国憲法第14条において禁止されており、そうした差別の解消が行政の義務でありながら、差別に加担するような行為は政治家として到底許されるものではありません。
また、平成二十四年一月十九日発の厚生労働省告示第二十一号「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」において、
「国及び都道府県等は、個別施策層(感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、感染に関する正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるために施策の実施において特別な配慮を必要とする人々をいう。以下同じ。)に対して、人権や社会的背景に最大限配慮したきめ細かく効果的な施策を追加的に実施することが重要である」
「個別施策層としては、現在の情報に鑑みれば、性に関する意思決定や行動選択に係る能力について形成過程にある青少年、(中略)性的指向の側面で配慮の必要なMSM(男性間で性行為を行う者をいう。以下同じ。)が挙げられる」
と明示されております。
MSMについて詳述すれば、男性の身体を持つ者同士で性行為を行う「こともある」人々の総称であり、男性同性愛者の他にも、男性両性愛者、男性同性愛者を相手に性行為を行う男性異性愛者も含まれております。
特に、売春を行っている男性異性愛者は正しい知識の乏しい(「ハイリスクを承知」しているとは限らない)青少年であることも多く、女性への感染拡大の入り口としても懸念されています。これらを「ホモ」とひとくくりにして捉える県議の認識は全く誤っており、公衆衛生学的に危険ですらあります。
井上県議におかれましては、自らの職責を正しく認識し、発言を撤回することを強く要求するものです。

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