なぜ、いま「石原慎太郎の差別発言を振り返る」のか?

なぜ、いま「石原慎太郎の差別発言を振り返る」のか?
10年ひと昔というが、この10年で、いわゆるLGBTと称される一部の性的マイノリティグループに対する「理解」は、飛躍的に進んだと言えるだろう。
とくに、若い世代にそれは著しい。
放っておいても、あと30年もすれば、大勢は決し、実質的に「差別」も消滅するのではないか、と思えるほどだ。
だが待って欲しい。
約30年前、わたしもそう思っていたことが、ふたつあった。
ひとつは女性差別の問題。いわゆるフェミニズムの課題だ。
1990年、日本のフェミニズム運動はその歴史的な頂点を迎えていた。
男女雇用均等法が可決され、もはや大勢は決し、男女平等への道筋はついたものと、わたしも含めた多くの女性学徒・活動家は信じていた(一部のベテランは、そう甘くはないという警鐘を当時から鳴らしていたのだが)。
わたしは、おめでたいことに、「バックラッシュ」が既にはじまっていた00年代の半ばまで、フェミニズムはすでに勝利しており、体制に組み込まれたので見えなくなっただけだと信じていた。
それがどうだ。
未だに女性の人権は非道くないがしろにされており、国際比較をみる限りでは、日本国の女性の地位は低くなる一方である。
もう一つは、他ならぬ、セクシュアル・マイノリティの人権。
80年代末期、トランス・ジェンダーという言葉が紹介され、ポルノの登場人物ではないレズビアンやゲイの存在が、可視化され始めていた。
若い世代には信じられない人もいるかもしれないが、当時のフェミニズムはそれを強力に後押しし、その後ろ盾を得たゲイとその友人たちが、メディア上で史上空前の「ゲイ・ブーム」を演出した。
わたしもその片棒を担いだ者の一人だ。
しかし、その夢は長くは続かなかった。1996年の夏、第三回「東京レズビアン・ゲイパレード」において、実行委員幹部のゲイが言い放った「レズのくせに何を言いやがるのか」という発言により、当時のレズビアン活動家の多くが決定的に運動から離反した。わたしはその言葉を聞いた直後、はっきりと、「これで日本の性的マイノリティの運動は10年遅れる」と思ったが、いま振り返ると、これは「15年」の間違いであった。
2011年まで、運動は停滞していたと確信する。
2011年に、石原慎太郎東京都知事(当時)の同性愛者差別発言に対する抗議が強くまき起こり、東京のプライドパレード体制は刷新され、今の「LGBT」ムーブメントの主力を担った多くの団体が設立された。
そして10年。
足立区の白石正輝区議が、こともあろうに、ひろく公開された議会本会議内において同性愛者差別発言を行った。これは、石原でもやらなかった、できなかったことである。そして、わざわざLとGを、BとTから区別して差別するという、確信犯的な発言であった。
その後にも春日部市の井上英治市議の差別発言が続き、各地の自治体では、議員の過去の差別発言が確認されつつある。
これは、個別例外的な動きではない。
かつてのフェミニズムに対する「バックラッシュ」や、性教育に対する攻撃と同じく、組織的かつ確信的な政治行動なのである。
かつて、フェミニズムはバックラッシャーの力を軽んじ、きわめて大きな傷を負い、戦線の後退を余儀なくされた。
我々は、この失敗に学ぶべきである。
今度は相手の力量を見誤ってはならない。
敵は巨大で、聞く耳を持たず、力も持っている。
前を見て、腹に力を込め、全力で反撃しよう。
鬨の声を上げよ、立ち上がれ。
己が怒りをぶつける、今がその時だ。
2020年11月29日
NPO法人レインボー・アクション
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